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Haida Gwaii

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この美しいジョージア海峡よりもずっとずっと北の、カナダとアラスカとの国境近くに
大小150以上の島々から成るクィーン・シャーロット諸島がある。

以前から、なぜか行ってみたいと強く魅かれる場所。ここにも度々書いた。
私にとってのインドと同じく、「呼ばれないと行けない」神聖な地でもあるような気がする。
それは、人類はこの島々で貝から生まれたという伝承があることと無関係ではないだろう。

悠久の時の流れのなかで、自然とともに暮らしてきたハイダ族。
レインフォレスト(温帯雨林)と海の恵みを存分に生かし
自然の摂理にのっとった文化を築きあげてきたファースト・ネーション。

ワタリガラス、ハクトウワシ、サーモン、ハイイログマ ・・・
動物や植物などの自然界のシンボルがレッドシーダーの巨木に彫りだされ
歳月に風化されるままに朽ち果てつつある、
クイーン・シャーロット最南端に位置するアンソニー島のトーテムポール。
それは、信仰崇拝の対象物としてではなく、家の柱として、目印として、
時には人間の墓場として造られたもの。
トーテムポールの上部をくり抜いて遺体を埋葬した後、その上に偶然落ちたトウヒの種子が
人間の身体の栄養を吸収しながら根づいているものもあるという。

19世紀の終わりにヨーロッパ人がもちこんだ伝染病によりハイダ族は壊滅。
20世紀に入ると、強国の博物館による美術品収集という荒波に飲み込まれ、森林伐採も進み・・・
諸島北部で伐採される木々の主な輸出国が、
実は我々の住む日本であるという事実にも複雑な想いを抱く。


生き残ったハイダ族の子孫たちによって、時の止まった昔のままの風景が守られ、
そこに静かに存在しているトーテムポール。
移築するとその霊気が失われるという。
ありのままの姿を、ありのままの空気感の中で。
島を訪れる人々の数もさりげなく制限され、他の観光客と顔を合わせないような配慮も、
そのウォッチマンたちによってなされている。

+++

彼らが持つのは、石の文化ではなく、木の文化だ。
だからこそ、永遠ではない。永遠でないものは、ない。
自然のサイクルの中で、万物は自然に還る、だたそれだけのこと。

あと30年もすれば、朽ちかけつつあるトーテムポールは
すべて森の中に消えてしまうだろうと言われている。
それ自体、悲しいことではないし、悪いことではない。
自然のサークルの中に、すべてがあるということだけだ。

ただ、倒れてしまう前に、消えてしまう前に、この目でしっかり見ておきたいと思う。
現代を生きる私たちに対する強烈なメッセージが、そこにあるような気がしてならないから。
見る人によって、おそらく感じることが違ってくるような気がする。
だからこそ、一緒に行きたいと思ってくれる人がいるのならば
気持ちを素直にシェアし、そして、感じたことを聞きたいと思う。

欲しいものはなんでも手にすることができる現代。
お金では買えないなにかが、確かに存在する。

写真家、星野道夫の著作を読み、
行きたいという想いをさらに強くしている今日この頃。

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by yuru-life | 2010-11-23 11:46  

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